二つの死

4/6
前へ
/74ページ
次へ
二人は、城に向かってノロノロと歩いていた。 そういえば、道三の命日は3月3日だ。 今日は雛祭りなのだ。 まあ、ほんの余談はさておき、信長と濃姫は、ふざけあいながらの帰り路。 二人の周りを、小さな白い蝶が、三羽、ひらひらと舞う。 美濃を出てからと言うもの、あの紫の揚羽を見なくなった。 きっと、また、母小見の元へ帰っているのだろう。 不意にふわっと桜がまう。 「綺麗……!!」 濃姫は嬉しそうに、両手で花びらをすくう。 そんな濃姫を、信長はいとおしそうに目を細めて見ていた。 「あら、貴方、凄いアホ面」 「いやぁ~……お濃は本当に可愛いなぁ」 ただのノロケ。 「ありがと。貴方は本当にアホ面だけどね」 濃姫は、ちょっぴり嫌味っぽく笑う。 「私には釣り合わないわ」 「そうかぁ……?」 信長は鼻の下をこする。 「うつけと凶暴女。ぴったりだと思うけどなぁ」 「な……凶暴じゃないし!!」 その時、佐久間盛重が走って来た。 「若殿ーッッ!」 「ぅん?どした。盛重」 盛重はサッと信長に手紙を渡した。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

407人が本棚に入れています
本棚に追加