清州城主

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「信長様………」 声が震えている。 それは恐怖なのか、それとも怒りなのか………どちらにしても、いつ信長を殺すかわからない………。 濃姫は警戒の目で、義統を見据える。 ─こんなやつに、信長殿を殺させる?………あの人は、私が殺す……それまでに、殺させるわけには………。 だが、濃姫の予想は見事に外れた。 義統は、下唇を舐めると決心したように切り出した。 「清州城主、織田信友をご存知ですか……?」 「勿論」 信長は、あぐらをかいたままゴロン、と一回転。 「そいつがどした」 ここが重要だ。 「奴は……奴は信長様、貴方を暗殺しようとしております」 「えぇっ!?」 先に声を出したのは、信長ではなく濃姫だった。 信友殿は、お亡くなりになった義父上様の重臣だったはず。 なのに…………。 「おぅ。元々わかっておった……。俺はいつか、アイツに殺させるってことぐらい」 「……はあ」 「前々から奴は俺の飯に毒を混ぜたりしていたかんなぁ。ま、俺の眼は騙せねぇけどな」 余裕の笑みを見せる信長に、義統はしわのある目を丸くする。 「義統、ありがとな。これで俺も……安心して制裁を与える事が出来る」 「……信長様のお役にたてて、義統は光栄でございます」 斯波義統は、頭を深々と下げると、 「物騒な話、申し訳ない」 と言い残し、部屋を後にした。
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