父と兄と叔父と………

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ガササッと、背後から音がする。 義統は、素振りをやめ、辺りを見回した。 ………何もいない。 「……?」 ちょいと首を傾げるが、気にせずまた、素振りを再開した。 その時だった………。 「御首頂戴!!!」 「!!!貴様、信友の…………」 ズビィッ……………… 「ぐ……ぁ…」 義統はその場に倒れた。 「裏切り者は、死すが運命」 義統を切りつけた男………弥七は、キン、と細い刀を背中の鞘に納める。 「く……覚えておれ……必ず……信長様が貴様らに、天罰を……下す……と」 「ふん。脅しのつもりか?負け犬がいくら言っても無駄」 弥七は見下したように言うと、しゃなりと音をたてて屋根へ掛け上がった。 「整然息子に最期の言葉でも贈るんだな」 火薬を宙に投げて爆発させると、弥七は消えた。 「………父上ッッ!?」 息子、義銀が駆けてくる。 さっきの爆音で、気にして戻って来たのだった。 「父上……その傷は…?!」 「清州の……忍びに………」 起き上がろうとする義統。 だが既に彼は虫の息だ。 「ご無理なさらず!手当てを………」 「いや……もう……無駄だ………」 真っ赤な血が流れる。 義銀は眉をしかめた。 「父上!希望を失ってはなりませぬ!」 「現実から目をそらすな……義銀…」 「………父上……」 義銀は、すがるように父、義統の手を握る。 「いいか、義統……次はお前が………命を掛けて信長様を守るのだ………」 義統の最期の言葉は、息子、家族の心配ではなく、自分の主の事だった……。 「父上ッッ……目を覚ましてください!!……っ……父上!!!」 涙が溢れる。 義銀はそれを我慢するかのように下唇を噛み締めながら拭った。 「父上……必ず私が………仇を!!!」 義統の血にまみれているのにも関わらず、義統は馬を飛ばし、尾張に向かった。
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