父と兄と叔父と………

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話の発端は、義龍だった。 天文23年(1554年)、道三は、義龍に家督を譲った。 そこまでは良い。 だが、弘治2年(1556年)義龍と道三の意見が合わず、義龍は実の父親と絶縁をしてしまった。 濃姫はそれをつい最近、初めて聞いた。 「そのくらいで絶縁なんて………」 兄の義龍に直接告げられ、濃姫は言葉を失った。 「親父が悪いのだ」 ムスッとした表情で返された。 「と、言うことは兄上様は、もうお濃の兄上では無い…と……?」 「………かもなぁ……」 「………そんな……………」 濃姫は兄の義龍を慕っていた。 いつもやんちゃで、ちょっと口が悪いけど面白くて、母、小見に似て聰明で優しくて…………。 気が付けば泣いていた。 「泣くな、帰蝶」 妹の髪をそっと撫でる。 「いつ、敵になるかは分からない。それが、戦国の世なのだ」 「ですが………」 「帰蝶、俺は父上……いや、斎藤道三を討つ」 「!!?何で!!??」 義龍は淋しげに笑う。 「俺の……天下のため」 「濃は……濃は認めませぬ!!」 泣きながら叫んだ。
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