うつけと蝶

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その時だった。 ドシャ。 「きゃっ?!?」 帰蝶の右頬に雪だまが直撃。 あまりの冷たさに頬を擦る。 「ハハハハハ!!」 突然の笑い声。 思わず帰蝶は振り向いた。 そこには少年が立っていた。 凄い格好だ。 豪華、の凄いではなく……。 酷い格好だ。 茶色のゴワゴワした大きな毛皮を羽織り、胸のあたりなんかはだけてる、と言うより丸出し。 下は沢山の種類の布を、めちゃくちゃに巻いている感じ。 しかも足は裸足だし……。 馬鹿じゃないか、こやつは。 「何よ?」 帰蝶は爆笑している少年を睨み付ける。 「お前、間抜けだなぁ!」 ヒィヒィ言いながら涙を拭く。 腹を立てた帰蝶は、思い切り氷の固まりをぶつけた。 「間抜けとか言うな!!馬鹿者!!」 「いいってぇぇ!!氷はねぇだろがぁ!?」 「うるさい!!貴方が悪い!!」 さらに追い討ち。 粉雪をぶっかける。 「つめてぇッッ!!なんだぁお前!?やんのかー??」 少年はそんな事言いながら、楽しそうに雪を掛けてくる。 それに帰蝶も対抗する。 氷を見付けては投げつけた。 「だっから氷は無しだって!!蝮の姫さんは凶暴女だって噂流すぞ!?」 「えっ!?」 帰蝶の手が止まる。 「何で私が斎藤道三の娘だって分かったの…?」 「俺様は天才!!それだけだっ!」 帰蝶は呆れたように肩をくすめる。 「馬鹿者のくせに。よく言うわ」 その言葉に、少年はフンと鼻で笑った。 「何?」 「馬鹿者は俺様にとっちゃあ誉め言葉だぁ。好きなだけ言ってくれ♪」 「………お気楽なやつだ」 帰蝶は思わず苦笑した。
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