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気が付けば、もう夕方だった。
少年と帰蝶は、疲れはてて土手に座りこんでいた。
「……寒い」
そういえば帰蝶は、何も用意せずに城から抜け出したので、着物一枚だ。
羽織なんて持って来てない。
「ほい。貸しちゃる」
少年は、熊みたいにゴワゴワの毛皮を帰蝶に被せた。
「貴方が寒いじゃない」
しかも上半身は裸だし。
はたから見たら……大馬鹿者だ。
「大丈夫だってぇ!!馬鹿は風邪ひかねぇし!!」
少年は豪快に笑う。
……何なんだ、こやつは。
「ねぇ、貴方一体だれ………」
「姫様~!!帰蝶様ぁっ!!」
爺が走って来る。
「やっべ。俺、行くわ」
少年が慌てて立ち上がる。
「待って」
「うん?」
「コレ、いつ返せばいい??」
毛皮を指す。
「何時でもいいけど………じゃあ次会った時だ!!」
「次って……いつ?」
「そんとき、そんとき!!じゃあなっ!!」
少年は白い雪の中を駈けていった。
しかも裸足で。
……やっぱりただの馬鹿者だ。
って言っても……いつ会えるんだろう?
普通に考えて……会えるはず、無い……。
「姫様、こんなところにいらっしゃったのですか!!もう父上も母上も心配して……」
爺が駆けてきた。
「すみません。爺」
「それにしてもその小汚ない毛皮は……??
早く帰って、処分しましょう」
「駄目よ。コレ、借り物なんだから。ちゃんと返さなきゃ」
帰蝶は爺に向かってチッチと指を振る。
「借り物って……何方から??」
「馬鹿者から。さあ、早く帰ろう」
帰蝶はスタスタと歩き始めた。
思えば、城内以外の、同じ歳ぐらいの人間と遊ぶのも、初めてだった。
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