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3. 冬の夜
「かえでー。帰ったぞー。」
リビングのソファに横たわっている楓を足で揺さぶる。
「おぉーい。かーえでー。お前の分もメシ食っちゃうよー?」
やる気のない返事を返すだけで、楓は一向に起き上がる気配を見せない。
いつものことなのだけれど。
ちょっと、試してみようと思った。
「今日、美保ちゃんに会った。」
物凄い勢いで楓が起き上がった。
嵐は今日はよく驚かされる日らしい。
「どこで?」
「ど、どこって、駅前。」
「なんで、駅。」
嵐はチャリ通なのだ。駅に用はないはずだった。
「いい子だよな。お前には絶対もったいない。」
そう言うと嵐は踵を返してダイニングに向かった。
「だから、なんで駅にいたんだよっ。」
よたよたとソファから立ち上がった嵐は、とりあえず兄の後を追った。
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