63人が本棚に入れています
本棚に追加
夜も随分冷え込むようになった。
寒くなると決まって、楓は嵐のベッドに潜り込む。
小さい頃からずっとそう。
いい加減体も大きくなって、二人で寝るには少し狭い。
けれど、なんだかんだ言いつつもいつも嵐はそれを受け入れる。
「嵐ー。入れてー。」
返事を待たずに布団に入り込む楓。
「お前一人で寝れねぇの?」
そう言いながらも拒まない嵐。
楓は鼻まで布団を被る。
「あったかい。」
寝返りを打って嵐のほうを向く。
そして無言で手を握る。
嵐もそれを握り返す。
一点で体温がぶつかって、溶けて、混ざって。
一番よく知っているこの温度が、一番よく眠れる。
楓は早くも寝息を立て始めた。
寝起きは悪いが、寝るのは早いのだ。
嵐は暫く楓の無防備な寝顔を眺めていた。
明るくて、よく笑って、甘え上手な、自分と似て異なる顔をした楓。
草臥れた髪を撫でる。
美保の顔が重なった。
楓もあの子の前でこんな無防備な姿を見せるんだろうか。
あの子にどういう風にキスをするんだろうか。
あの子をどういう風に抱くのだろうか。
自分と殆ど同じ顔で。
最初のコメントを投稿しよう!