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寝息を立てる楓の顔に嵐はそっと自分の顔を近づけた。
その気配に気づいた楓はうっすらと目を開いた。
一度寝たら起きないとばかり思っていた嵐は一瞬戸惑った。
けれど、引っ込み方も、誤魔化し方も、知らなかった。
そのまま、唇に唇を当てた。
楓が嫌がりも引きもしないから。
嵐も止めなかった。
あっさりと割れた唇の隙間から、楓の体温を感じた。
舌を追う。
それに応える。
呼吸を感じた。
あぁ、やっぱり同じなんだ。
「ん…っ。」
楓の整った眉が歪んだ。
嵐はゆっくりと口を離した。
「…苦しいって。」
眉を寄せた楓が放った言葉は、たったそれだけ。
動じることのないその瞳は、まっすぐ嵐を見ていた。
こんな瞳、見たことない。
潤んだ唇が目に入る。
こんな唇も、初めて見た。
あの子が知っている楓を、自分が知って何が悪い?
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