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大和屋。
その周囲には人だかりが出来ており、凄まじい音が響いている。
音の正体は大砲だった。
芹沢が蔵に大砲をぶちこみ、破壊したのだ。
その様子を、大和屋の店主は見ていることしか出来なかった。
自分の店が破壊されていく様を、茫然と見つめることしか出来なかった。
ヘナヘナと、その場に座り込んでしまった。
「そんな…何故だ……」
呟く店主の後ろに、男が立った。
「おい」
男の声に、店主は震え上がった。
恐る恐る振り向き、小さく悲鳴を上げた。
「せ、芹沢はん…」
芹沢は店主の胸ぐらを掴み、凄んだ声で言った。
「千景という女を出せ」
店主は口を開いたが、すぐに閉じた。
芹沢の威圧感の前では、何も出来ない。
「…出せと言っている」
店主はガクガクと頷き、へっぴり腰で走り出した。
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