第四章

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「なんだ?平山」 場所を変えて、今は芹沢と平山の二人きりだ。 芹沢が訊ねると、平山は潜めた声で答えた。 「千景という女の居場所が分かりました」 「本当か!?」 頷き、平山は続ける。 「西陣の糸商大和屋です。先生は大和屋を御存知ですか?」 芹沢は顎に手をあて、暫し考えた。 「……名は聞いたことがあるが」 「情報によりますと、タダ働き同然のようです」 芹沢の眉間に皺が寄った。 「飯もろくに与えてもらえず…。子供が心配だからと脱走を試みたようですが、大和屋の店主はその女を気に入ったようでして。何度も連れ戻され、酷い仕打ちを受けているらしいです」 芹沢がキリキリと歯軋りをした。
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