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戻ってきた店主の後ろには、若い女が居た。
しかし若さはまるで感じられず、窶(ヤツ)れていて、疲れが目に見える。
一気に、芹沢の頭に血がのぼった。
刀に手をかけた。
チャキ、と鍔が鳴る。
店主は戦(オノノ)き、間抜けな声を出した。
芹沢は店主を射抜くように見つめる。
やがて芹沢は刀から手を離すと、店主に告げた。
「その女を連れて行く」
「しかし…っ」
「俺は」
芹沢は店主を睨み付けた。
「その女にお前がしてきた仕打ち。全て知っているぞ」
店主が後ずさった。
「この事は不問にしてやる。その女は俺が連れて行く。何か文句でもあるのか?」
店主は首を振り、女を差し出した。
女、つまり千景は驚きや戸惑いを隠せないようで、芹沢と店主を交互に見ている。
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