第四章

6/11
714人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
芹沢は店主を一瞥し、大和屋へ背を向け、歩き始めた。 慌てて千景も後を追う。 「芹沢はん!!」 女の声が、芹沢の足を止めた。 大和屋の女将だった。 女将は悲痛な声で叫ぶように問うた。 「うちの店の何がお気に召さなかったんどすえ!?」 女将のその様子からして、店主の悪行を知らないのだろう。 芹沢は嘲笑を浮かべ、答えた。 「金を借りようとしたら断られたんでな。むしゃくしゃしてやった」 この焼き討ちが芹沢暗殺の引き金となったことを、芹沢自身は知る由もない。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!