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芹沢は店主を一瞥し、大和屋へ背を向け、歩き始めた。
慌てて千景も後を追う。
「芹沢はん!!」
女の声が、芹沢の足を止めた。
大和屋の女将だった。
女将は悲痛な声で叫ぶように問うた。
「うちの店の何がお気に召さなかったんどすえ!?」
女将のその様子からして、店主の悪行を知らないのだろう。
芹沢は嘲笑を浮かべ、答えた。
「金を借りようとしたら断られたんでな。むしゃくしゃしてやった」
この焼き討ちが芹沢暗殺の引き金となったことを、芹沢自身は知る由もない。
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