第四章

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ゆっくりと、門を潜ってきた千景。 目を伏せている。 「お母さん…?」 顔を上げた。 千景の視線の先には、目をこれでもか、という程に見開いた千歳が居た。 千景も目を見開き、掠れた声で言った。 「千歳…?」 「お母さん…!!」 千歳は走り出した。 千景も走り出す。 「お母さあん!!」 「千歳!!」 どちらから、というわけでもなく二人は抱き締め合った。 千歳は涙で顔をぐちゃぐちゃにして、大声で泣き始めた。 千景も涙を流し、何度も愛しい我が子の名を呼んでいる。 芹沢はそんな母娘を見て、優しい笑みを浮かべた。 母娘水入らず。 そっと、芹沢は自室へと向かおうと一歩踏み出した。 しかし、 「おじちゃん!」 千歳が芹沢を呼び止めた。
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