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振り向いた芹沢の膝辺りに衝撃がきた。
千歳だった。
着物が濡れた気がしたが、芹沢は千歳を突き放したりはしない。
「千歳?」
相手を間違えているぞ?
お前の母親はそっちだ。
千歳は頭を上げ、涙声で言った。
「おじちゃんありがとおぉー」
芹沢は驚き、思わず千景を見た。
彼女は深々と頭を下げていた。
下げたまま、千景も涙声で言った。
「本当にありがとうございます。感謝してもしきれません」
芹沢の中から、何かが込み上げてきた。
ぐっと堪え、しかし目頭をおさえた。
芹沢は、
「俺は…大したことをしていない」
それだけしか、言えなかった。
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