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ぼくは呼んだんだ。
『 お母さん 』って
なあに? と母が応えた。
鏡の向こうの僕が寂しそうに笑った。
ぼくは呼んだんだ。
『 お父さん 』って
なんだ?って父が言った。
僕の足元の影は、立ち尽くしたまま…悲しそうに笑ってた。
僕は言ったんだ。
『あのね、今日ね…』
台所に立つ母には聞こえなかった。
僕は言ったんだ。
『あのね、明日ね』
パソコンに向かう父には聞こえなかった。
鏡に向かってお化粧する母は、綺麗で優しそう。
難しい顔で新聞を読む父は、なんだか格好いい。
料理を作る母は…
仕事をする父は…
ぼくをみてくれない
ぼくは お母さんと
お父さんが 大好きだよ。
ぼくは
鏡の中にも
新聞の中にも
フライパンの中にも
どこにもいないよ。
忙しいのよ
疲れた
後でね
仕事なんだ
呪文をかけられた僕
良い子にするから
ぼくをみて
ぼくは ここに いるよ
ぼくは ここに いるの?
ぼく は だれ ?
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