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食卓につき、皿に盛られたベーコンエッグに手をつける。
「今日はルイちゃんに会う日だよね」
キリはたっぷりと口に含んだ朝食に声が出せず、コクコクと頷いた。
「また遊ぶの?」
急いで飲み下して口を開く。
「あたりまえだろ。せっかくの一日なんだから」
言ってキリは残りをかっこんだ。キリの母は自分の髪を指でくるくるともてあそぶ。
「まどろっこしいなあ。……好きなら襲っちゃえばいいのに」
ぶーっと、下品な音が響き、ベーコンのかけらが飛散した。
キリの顔は、文字通り真っ赤。
「べっ、べつに好きなわけじゃ……」
「青春だねぇ」
慌てるキリに、釣られるほど短い付き合いではない。
「行ってきます!」
顔の熱も冷めぬまま、キリは一声叫んで家を出た。
「行ってらっしゃい」
反射的に返して、もう届かない距離であると知る。
「あの子、ほんとのこと、いつ知るのかな?」
だからこそ呟けた一言は、やはり、誰も聞いてはいなかった。
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