ある日あの時

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「わかった。ちょっと待ってろ」 言って手頃な道具を探す。 それは幸運にも近くに転がっていた。 キリの身長より少し短いくらいの、太く長い木の棒。 これでほうきを作れば、使い心地よさそうである。 対岸を見据えて、それに跨がる。 飛ぶ方法がない今、ここで魔女の才能が芽生えることを祈るばかりだった。 「いくぞ。しっかり見てろよ」 気張ってみせても、この落差で川に落ちても死なないか必死で計算している。 息を止めて、気合いを振り絞る。 今生の別れに強く大地を踏み締めると、下草に付着した朝露で足が濡れた。 最後に一度大きく深呼吸。そして、 「いっけぇぇぇぇ!」 ... 跳んだ。 結論から言えば、びしょびしょである。 春とはいえ水温が上がりきっていないのか、連続してくしゃみが漏れる。 共に一瞬の飛翔を体感した枝は、川を流れて流木と化していた。 「あはははっ」 上の方から盛大な笑い声。その声はルイのもので、まったく濡れ損というやつだ。 傾斜の低いちっぽけな崖を、勢いづけて登る。視界に入るのは当然、腹を抱えて笑い転げるルイ。
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