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キリがルイに初めて会った日は、もうずいぶん昔のこと。
気付いたら近くにいて、気付いたら一緒に遊んでいた。
だけどその頃から、彼女には週に一度しか会えなかった。
ルイは病弱で、過度に外出してはいけないというのだ。
日曜日に彼女の家を訪れると、明るい笑顔で出迎えてくれる。
しかしそれ以外の日は、いつ見てもカーテンが閉まりきっていた。
けれど、今日は日曜日。
久しぶりにルイに会える日だ。
この前はおかしな空気のまま別れてしまったから、今日は存分に遊ぶつもりだった。
裏の林に入って虫とりしてもいい。女の子はそれだけじゃつまらないだろうから、花の咲く、ルイが気に入りそうな場所を教えたり。
考えるだけで心踊った。
階段を駆け降りて、一階のリビングに飛び込む。
「おはよう。キリ」
「おはよう。朝飯ある?」
「すぐに並べる」
「ありがとー。母さん」
やり取りの相手は、言った通り母だ。
三十も中頃にしては肌に張りつやがあり、始終笑顔の表情も若々しい。
ルイとはまた違った色素の濃い金髪をショートにして、薄く赤に染まった瞳が爛々と光る。
一方のキリはといえば、髪、瞳共に母親から受け継いでいた。違うところは重力に逆らうかのように髪が逆立っていること。十を過ぎたばかりの顔立ちも手伝って、通りすがりの人に聞けば、十人中九人までもが生意気なガキだと称する。そんな子供だった。
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