遠い遠い……

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遠い遠い……

小さな砂場で、男の子は一人遊んでいた。 一心不乱に土を掘り、山と重ねていく。 掘り終わったら今度は埋め、そして掘る。 それは、友達のいない彼がずっと続けてきた行為だった。 少し休もうかと手を止めると、砂場にさす影に気付いた。 影にそって顔を上げていくと、お人形みたいな同年代の少女がいた。 土に意識を戻す。もう彼女に興味はない。 しかし少女もまた土を掘り始めた。彼と同じ場所を、手の平でせっせと掘り始めた。 白磁のような傷一つない手が、途端に泥で染まる。 見ていられなくなったのか、彼は無言で自分のスコップを渡した。 そしてまた掘る。 少女は、渡されたスコップを動かした。 日も陰るころ、老婆が少女の手を取り、丘の上へと消えていった。 ぽつりと残されたスコップ。 握って、彼は最後の土くれをすくう。 完成した高い山を眺めて、逡巡。 結局いつものように埋めはせず、彼は帰っていった。 ――それは遠い遠い、二人が初めて出会った時の記憶。
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