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月明かりの下、艶やかな白い肢体が浮かぶ。
その肢体に必死にしがみつき、荒い息を立てている男が見える。
男の顔には悦が浮かび、荒々しく身体を上下させている。
そんな男を妖艶なる笑みで見つめ、男の行為をその細い身体で受け止める女。
男が大きく振るえ、至極と思える表情を浮かべて倒れる。
しかし、その顔には表情と裏腹に影がさし、こけているように見えた。
自分の上に倒れてきた男を鬱陶しそうにどかし女が立ち上がる。
脱ぎ捨てられている衣を拾い上げ羽織り、男を見下ろした。
「今回の男もまずかったのぅ。どこかに美味い男はおらんかのぅ。のぅ、火車」
女は男から視線をそらし、庭にぼうっと浮かび上がった方輪の牛車に話しかけた。
火車と呼ばれた牛車は炎をゆらめかせながら、カタカタと車を揺らした。
「若い男……とな? それは良い案じゃ。今日見た妖を連れていた少年でも味わってみようぞ。明日にでも印をたどって行くとするかのぅ」
女は羽織っていた衣に袖を通すと転がっている男を指差し、火車に向かって微笑む。
すると男の身体が庭に向かって転がりだし、次の瞬間炎に包まれた。
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