-始-

5/43
前へ
/66ページ
次へ
  「樹、私のいいつけを破りましたね。迎えに来てはいけないと伝えませんでしたか?」    鷹彦は声にするどさを含ませ、歩きながら横にいる樹に顔を向けた。 樹は鷹彦の言葉に今まで浮かべていた笑顔を曇らせうつむく。     「だって……」    そのまま樹は言葉を詰まらせ足を止める。 鷹彦はため息を一つつくと笑顔をつくり     「そんなに私に早く会いたかったのですか? 危険を冒してまでくるなんて、なんて私は樹に愛されているのでしょう。 さ、樹。鷹兄大好きと素直に伝えていいのですよ」   と言いながら樹を抱きしめて、頭をなでた。 樹は鷹彦の腕の中で顔を赤くして震えだし    「ちがわい!鷹兄が抜け作だから心配で来ただけだい!」   と思いっきり鷹彦を突き飛ばし、顔を赤らめたまま大きな足音をたてながら進みだした。 鷹彦は突き飛ばされても気にも留めずに笑顔のまま樹の側にいく。 紅はその樹の天邪鬼っぷりがおもしろいのかげらげらと笑った。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加