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「樹、私のいいつけを破りましたね。迎えに来てはいけないと伝えませんでしたか?」
鷹彦は声にするどさを含ませ、歩きながら横にいる樹に顔を向けた。
樹は鷹彦の言葉に今まで浮かべていた笑顔を曇らせうつむく。
「だって……」
そのまま樹は言葉を詰まらせ足を止める。
鷹彦はため息を一つつくと笑顔をつくり
「そんなに私に早く会いたかったのですか? 危険を冒してまでくるなんて、なんて私は樹に愛されているのでしょう。
さ、樹。鷹兄大好きと素直に伝えていいのですよ」
と言いながら樹を抱きしめて、頭をなでた。
樹は鷹彦の腕の中で顔を赤くして震えだし
「ちがわい!鷹兄が抜け作だから心配で来ただけだい!」
と思いっきり鷹彦を突き飛ばし、顔を赤らめたまま大きな足音をたてながら進みだした。
鷹彦は突き飛ばされても気にも留めずに笑顔のまま樹の側にいく。
紅はその樹の天邪鬼っぷりがおもしろいのかげらげらと笑った。
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