-始-

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   「紅、うるさいよ」     樹は横についてきている紅をかるくどついた。 紅は眉間にしわを寄せ     「お前にぶたれたくないわ!ワシのか弱い頭が割れるんじゃ」     と幼ない姿に似合わぬ口調で樹に言い返し、舌を出した。 鷹彦は樹と紅がじゃれている姿を微笑ましく見つめ、樹の頭に手をやり撫でる。    「さっきは素直に喜んで飛びついてきてくれて嬉しかったですよ」     樹は顔を真っ赤にしながら     「べ、べつに……あれは……」    とどもる。 紅がすかさず横から    「久しぶりに会えて嬉しくて思わず飛びついたのじゃろ? お前はいつもあんな風に素直にした方が可愛げがあるのにのぉ」     と可笑しくてしょうがないといった声で言う。 樹は軽く紅を蹴ると走り出した。    「ワシを蹴るなんてなにごとじゃー」     紅は怒りながら樹の後を追った。
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