道化

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      "青"   道化がそう呟くと   "紅"   と命の代償に片足を失った少女もまた呟いた       "白"   シーツに目を落とした少女が言うと   "雪"   外を眺めていた道化が言う       "月""星"   "雲""水"   "闇""夜""街""土"       まるで始めて言葉を覚えたかのように   …いや   無意味と思っていたものを   一つひとつ確認するかのように   二人は言葉を交わした     会話ではないけれど   互いの事は何一つ知らないけれど       "人…"   窓下を通った一家を見て   道化は小さく呟いた     "………"   "………"       "………怖い"   道化よりももっと小さな声で   少女は呟いた       "怖い…?"   道化は繰り返して呟いた     "怖い"   道化は確認するように   再度呟く       "怖い"   道化は初めて   自分の感情の名前を得た
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