77人が本棚に入れています
本棚に追加
『だって、違うもん』
ふわり、と思い出す数十分前の記憶が、渋面を作らせた。
頭に浮かぶ妹の夕季(ゆうき)はシチューを盛られた食器を前に、泣き出す寸前の顔をしている。
また走りだしそうになる足を抑えて、朝陽は淡々と歩くように努力した。
「…あたしだって解んないもの」
言い訳とも愚痴ともつかない言葉が知らず口から漏れる。
人気のない道も、暗く色彩の乏しい裏路地も朝陽の憂鬱な気分に拍車をかけた。
「……え」
と、歩みが突如として止まる。
通りは大通りに出る事はなく、段々と狭まり、最終的には行き止まりになっていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!