第一章.世間

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「ん?」 朝食のトーストを口に頬ばり母を見つめると心配そうにこちらを見ていた。 「大丈夫だよ!心配しすぎ。それに家にこもってもしょうがないじゃない?」 しかし、普通はお母さんみたいな反応が正しいのかもしれない。 けど、私はまだ漠然とした現状しか見えておらず人事のようにしか思わなかった。 それに――… 「今日は、皆と最後の日だし。」 そう言うとお母さんは 「そうだったわね…。」 と優しく微笑んでくれた。 「そうだよ、それに明日はおばあちゃんがいる月神村に引越すんでしょ?心配しすぎ。」 そう言うとお母さんは私に背を向けた。 「いってらっしゃい。」 顔は見えない。 けど優しい声色。 きっと微笑んでいると思えた。
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