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私とクリスは自分達の荷物をまとめることにした、といってもクリスの分も私がまとめることになってしまう、二人分だ
一応クリスは男だ、きちんとした服装をさせないといけないと思い、いい服を引っ張り出して、洗濯して畳んで鞄に詰め込んだ
加えてクリスのお気に入りの人形も詰め込もうとするが、鞄が予想外にミチミチで大道芸のような体勢でしか入らなかった
ふぅ、と息をつく暇なく自分の荷物をまとめなければいけない
とりあえず、魔法関連の資料をカバンに詰め込む、それだけで9割は埋められてしまった
でも、私自身持ってる服も数着しかないのが救いだった、物凄く小さく畳んで何とか入れた頃には馬車が来ていた
荷物を持って部屋を出ると目の前にキャシーが立っていた、特有のニタニタした笑いかたで私を見ていた
「その部屋さぁ、お前が出てくから私のにするんだ、掃除してる?してなかったら最悪なんだけど」
「してる、自由に使って」
得意のポーカーフェイスで私はキャシーの横を通り過ぎる、そのときボソリと彼女は囁いた
『役立たず』
同じようなことを誰かに言われたような気がする、ああ、誰だったろうか
思い出したくもないことが頭をぐるぐる回って、気付いた時には思いきりカバンでキャシーの小綺麗な顔をぶん殴っていた
しかも端の金具部分で抉るようにだ、びっくりするくらい的確に鼻っ面を粉砕し肉を削った
声にならない悲鳴をあげながらキャシーは私の目の前でのたうち回っている
殺虫剤をかけたあとのゴキブリ、そんな感じで、驚くほど冷淡にそれを見ていた
ああ、私、初めてキレたんだ
そんなことをボーッと考えていた
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