383人が本棚に入れています
本棚に追加
「フレイルさん!!」
ルエはフレイルと詩鴇が宿泊している部屋に駆け込んだ。
「どうかしましたか?」
「吸血鬼らしき人影が見えたんです!!」
「なにっ…!?」
フレイルはベッドから飛び起きた。
「どっちだ!?」
「あ…、向こうの教会です…。」
「分かった!!」
フレイルはベッドの横に立て掛けておいた太刀を背負うと、窓を開けて飛び降りた。
「フレイル!! カナルフィ、ルエ!! 追いますよ!!」
「了解!!」
「は、はい!!」
詩鴇も立て続けに窓から飛び降りた。
「あ、ウ、ウタさん…!!」
「ルエ、掴まって!!」
カナルフィがルエを抱えると、続いて窓から飛び降りた。
「ぅわっ…!!」
「ったく、あの単細胞!! いつも勝手に動くんだから!!」
「え? 勝手にって…!?」
「あんにゃろ~!! 仕事 終わったら覚悟してなさいよぉー!!」
一方、単独で飛び出したフレイル。
教会に近付くにつれ、胸が痛み、表情も険しくなっていく。
「っ…!! この痛み、間違いねぇ…!!」
教会近くの建物の屋根にブレーキを掛ける様に着地し、辺りを見回す。
― どこだ…!? どこにいやがる!?
「ここだよ、フレイル。」
背後から声が聞こえた。
「!!」
フレイルは咄嗟に背負っていた太刀の柄に手を掛け、振り向く。
が、姿がない。
「ここだよ、ここ。」
また背後から声が聞こえる。
「…お遊びも程々にしやがれ…!」
「アハハ! 怒ってる怒ってる!」
姿なき者はフレイルを馬鹿にする様に笑う。
「そこにいるのは分かってんだよ!!」
フレイルは教会の屋根に向かって太刀の切っ先を向ける。
が、その先には誰もいない。
「まだ“透明化(クリア)”を使って人を騙してやがんのか? 生憎だが、もう それは俺には通用しねぇよ。」
「…ちぇ。つまんないなぁー。」
姿なき人物がつまらなそうに そう言う。
その直後。
白い光の塵が突如 何もない筈の空間から流れ始めた。
次第に光の塵は量を増し、そして徐々に人の姿を現す。
最初のコメントを投稿しよう!