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「今から百数年前。【聖母】が消滅する以前だ。まだ協会に所属してなかった俺は、実家でフレイヤと両親と暮らしていた。」
「仲は…、良かったの…?」
「ああ。今じゃ信じられねぇぐらいにな。」
「何が切っ掛けで、憎しみ合う事に?」
「…俺の故郷が“闇”側の吸血鬼に襲われた。その事件が原因だった。」
「ハァ…! ハァ…!」
全速力で家に向かうフレイル。
周りの家は、赤い炎に包まれていた。
道端には、炎に焼かれた死体が点在していた。
異臭が立ち込める中、フレイルは必死に火に焼かれる家に向かう。
「親父! お袋!! フレイヤ!!!」
扉を開けるが、家中には既に炎が回っていた。
「っ…!! 親父!! お袋!!」
フレイルは家族を捜しに炎の中を走る。
家族がいるかもしれない居間に向かう。
その時、フレイルの足に何かが当たった。
足元に目をやると、そこには男性が横たわっていた。
「…!! 親父!!」
抱き起こすが、既に息はなかった。
しかも胴体には大きく深い傷跡が。
「そんな…! お袋!! フレイヤ!!!」
フレイルは必死に叫ぶ。
「フレイル…?」
小さいが、自分を呼ぶ声が聞こえた。
フレイルは声がした方へ向かう。
その先は居間だ。
「フレイヤ…!!」
居間に来た途端、フレイルの顔が凍り付いた。
そこには確かにフレイヤと母がいた。
だが、母は壁に磔にされる様にして、胸を一突きにされて死んでいた。
「おふ…くろ…!?」
「よかったぁ…。無事だったんだぁ…。フレイル…。」
「フレイル…! お前…!」
「…? ああ、これ? なんかね、五月蝿かったんだ。“早く逃げろ”って。親に指示される程、子どもじゃないのにさぁ。」
「フレイ…ヤ…!」
「ねぇ、フレイル。俺さぁ、あーだこーだ言われるの飽きちゃったよ…。」
フレイヤは母から剣を引き抜き、フレイルに一歩、また一歩と近寄る。
「ねぇ、一緒に死のうよ。フレイル…!!」
フレイヤが剣を振り上げた。
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