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「ハニー、そのコートは冬の新作か? よく似合ってる」
ボスの称賛を受け、リンダが自慢げにポーズを決める。
「でしょう? もちろんバッグもよ。とっても高かったんだから」
「言ってくれれば、買ってやったのに」
「やあね、このくらい自分で買えるわ。ダーリンからの贈り物はもっと素敵がものがいいかしら」
リンダはデスクに腰かけ、ロングドレスのスリットから惜しみなく白い肌をのぞかせながら脚を組んだ。
「ダーリン、お仕事はどうなの?」
「順調――と言いたいところだが、どうにもペットのしつけがなってなかったらしい。頭の悪い犬を飼うと大変だ」
「それは困ったわね。まさかクリスマスに会えないなんてこと、わたし嫌よ」
口を尖らせるリンダ。するとボスはアンティークの花瓶に挿してあった一輪を抜き取り、彼女に差し出した。
「心配することはない。きっと二人っきりの素敵なクリスマスになるさ。プレゼントは何が欲しい?」
待ってましたと言わんばかりに、リンダはルージュを引いた唇を艶めかせてボスにすり寄った。
「わたし、クリスマスプレゼントは新しい別荘がいいわ。うんと小さくてもいいのよ、ちょっと疲れたときに休めるような――そう、青い海辺の――地中海あたりがいいかしら」
甘ったるい口調と上目遣いを駆使し、さり気なく細かい要求を突きつける。しかしボスは頬を弛ませ、ブロンドのパーマヘアーを愛おしそうに梳いていた。
「そんなのでいいのか? ハニーは欲が浅いなァ」
リンダはくすくす笑った。彼女は、そしてハウンドも、よく分かっている。あのボスが「別荘を一つ」と言われて、そのままプレゼントするわけがない。たいていは広大な土地をセットで――それはしばしば島ごと――贈られるのである。
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