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ルークはパーティーの来客に挨拶を返しながら、一人でワインを飲んでいる男のもとへ向かった。
「…父上。」
「思ったよりも来るのが遅かったな。」
「…すみません。」
男の名は
グルド=アストレイ
現在のレオンバルト帝国の皇帝の地位に座る者だ。
そして、ルークの父親にして…
―ルークがこの世で最も憎んでいる男…――
「…まあいい。それより話はテラスでしよう。」
グルドはそう言い、ルークを連れてテラスへ向かった。それまで、ルークはずっと父親の背中を強く、鋭く睨んでいた。
テラスへ着き、ルークが空を見上げると満月が出ており、月光と夜風が、サラサラとルークの髪を靡かせ、美しく輝かせていた。
「…では本題から入る。既にもう何度も言っているから分かるな?」
「………ええ…。」
「…グランティア王国の王となり、グランティア王国の秘密を探れ。分かったな?」
ルークの顔が曇る。
――『政略結婚』――
(…己の欲望の為に、自分の息子を利用するのか…)
ルークは心の中であざ笑う。
グランティア王国には王子はいなく、第一王女、ティアナ=ハーヴェルを後継ぎにすると王は考えていた。しかし、女が王となるのを親族は強く反対したため、今回レオンバルト帝国がもちかけた婚約を承諾したのだった。
結婚すればルークはグランティア王国の王となり、グランティアの政治に大きく関わることになる。
そうなると、ルークはグランティア王国の秘密を自然と知ることになるだろう。
―『グランティア王国』
世界で最も古い歴史を持ち、世界で最も文明が発達している王国。
古い国からか、王国には多くの伝説が存在し、その多くは謎に包まれ、政治では小国ながらも世界で大きな権力を持つ国だ。
グルドにとって、この国は酷く魅力的だった。
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