ACT2. 人生初めての恋が訪れる日

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 バカアニキ。  チクショー。ホント、お前には敵わねー。  何時も用意周到で、常に冷静で、俺を守ってくれるお前には、敵わない。 「ね、まだ時間あるし、もう一杯珈琲飲む?」  空になったカップを指差し、冗談ぽく笑いながら佐緒里さんが聞いてきた。 「もう結構。アニキの珈琲なら別だけど」  肩をすくめて苦笑いすると、佐緒里さんが微笑んだ。「同感」  あぁ。  手に入れたい。  ほんのわずかな間だけど、こんな気持ちになったのは初めてだし、誰かをこんなに欲しいと思ったのも初めてだった。  それから、暫く佐緒里さんとアニキの話で盛り上がった。  いや、盛り上がっていたのは佐緒里さんだけだ。  俺の心は、彼女の笑顔を見るたびにドキドキして、彼女がアニキの事を話す度に嫌な気分になった。  本当なら、自慢のアニキの話が出来て、嬉しいはずなのに――
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