ACT3. 絶望の果てに生まれる嫉妬

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 病院に駆けつけた俺達を、看護婦がアニキの元へ案内して貰った。  俺達を待っていたのは、アニキの変わり果てた姿。  赤信号で飛び出した子供を庇って――トラックに撥ねられたアニキの遺体。 「ア・・・・ニキ」  目の前の光景が、信じられなかった。  頭を強打したのが原因らしい。打ち所が悪かったのだ。  傷も無いのに。  綺麗な顔してるのに。  まるで眠っているみたいで――  何時も一緒で。  何時も2人で寄り添って生きてきたのに。  どうして俺を置いていったりするんだよ!  佐緒里さんをひとりぼっちで残したりして、どうするんだよ!!  お前、コレからずっと佐緒里さんと幸せになる筈だったんじゃねーのかよっ!!! 「ウソだろっ、アニキッ!!!」  誰か、ウソだって言ってくれよ。  なぁ。  昨日さ、俺、買い物サボっちまったから、アニキが食べたいって言ってた煮魚、作れなかっただろ?  だから本当は今日作ってやろうと思ってたんだよ。  そしたら大事なオンナ紹介したいとか言うからさ。  明日、作って喜んでもらおうって思ってたんだよ!  目、覚ませよ!  こんな所で寝てる場合じゃねーだろっ!!  お前はこれからずっとずっと、佐緒里さんと幸せになるんだよっ!  アニキの未来は、そう、決まってんだよ・・・・!!  俺はメチャクチャに泣き叫びながら、アニキの遺体にすがりついた。  わき目も振らず、一心不乱に、ただ泣き続けた。
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