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俺も一口珈琲を飲んでみた。
見よう見まねで珈琲を淹れてみたものの、アニキが何時も淹れてくれるあの美味しい珈琲では無かった。
全然別物の、全く違う飲み物だった。
この世にもう、アニキは居ないのだと思い知らせるかのような――そんな苦い味だった。
「ねえ、誠クン」
生気の無い瞳を向けて、佐緒里さんが俺の方を向き直る。「雅之さんの部屋、ドコ?」
「あ、ああ・・・・2階の、突き当りの部屋・・・・」
「行ってもイイ?」
「いいよ」
佐緒里さんは、よろよろとアニキの部屋の方に行ってしまった。
リビングに残った俺は、苦い珈琲を飲み干した。
さっき佐緒里さんと一緒に飲んだ、あのホテルの珈琲より不味かった。
「アニキ・・・・」
俺、コレからどうしたら良いんだよ。
この世にたった一人になっちまったんだ。
この現実に耐え切れない。
涙が溢れて溢れて、止まらない。
こんなにこの狭い家が――いや、二人で住むには十分広い贅沢な家が、この世界から隔離されて取り残されたような気がして。
アニキのお陰で成り立っていた生活も、楽しい日々も、全て失くしてしまったんだな。
俺は、どうしたら良いんだ。
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