5060人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
「誠クン」
佐緒里さんの声がした。慌てて涙を拭って振り返ると、佐緒里さんが呟いた。「おはよう」
「あ、あの・・・・佐緒里さん・・・・」
言葉が、出てこなかった。
何て言えばいい?
アニキを失くして悲しいのは、俺だけじゃない。
寧ろ、佐緒里さんの方がもっともっと悲しい筈なのに。
それなのに俺は、彼女をこんな形で傷つけてしまった。
「佐緒里さん、ゴメン!! 謝って赦されるコトじゃないって解ってるけど、でも――」
「誠クン、謝らないで。私だっていけなかったの。雅之さんの事、本当に混乱してたのね。ちょっと、正常に考えられなかったの。だから――昨日の事は、忘れて?」
「佐緒里さん・・・・」
佐緒里さんは微笑んだ。「そろそろ帰らなきゃ」
佐緒里さんはベッドから抜け出し、床に散乱していた衣服を取り上げ、身に着けた。
あの白い肌に、昨日は無遠慮に触れてしまった。
あの白い肌に、沢山、俺の跡を付けてしまった。
最低な事を思い出した。だけど、それだけで俺はまた興奮する。
――本当に、最低だ。
最初のコメントを投稿しよう!