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夢であってくれれば。
何時もみたいに、朝寝坊する俺の事を怒鳴って起こしてくれれば。
目を覚ましたら、何時ものように――
そう思っても、景色は変わらない。
犯した罪は、一生消えない。
アニキ――・・・・ゴメン。
俺、ホント何やってんだ。
佐緒里さんに、深い深い、決して消えることの無い傷をつけてしまったんだ。
彼女にもう一度謝りたかったけれど、彼女を見ていると、また、欲しくなってしまう。そんな風に思ってしまうなんて、ホント、サイテーだよ。
もう逢わない方がいいよな。
佐緒里さんを、もうこれ以上傷つけたくない。
けど、今は悩んでいても仕方ない。
アニキの葬式、ちゃんとやってやらなきゃ。
俺しか、アニキを天国に送り出してやれないんだ。
俺はアニキの遺影に飾る写真を探しに、2階の自分の部屋に行った。
雑にプリントが散らばっている机から、アルバムを探した。
見当たらないので引き出しを開けると、見慣れない封筒が入っていた。
『マコへ――
雅之』
それは、兄の達筆な字で書かれた、白い封筒だった。
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