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そして現在、季節は四月の半ばになっていた。
佐緒里さんが眠ってしまってから、もう一ヵ月程の月日が流れた。
俺は社会人一年目として新スタートを切り、アニキの会社で働いて、慣れない毎日と、アニキの居ない一人での生活に追われていた。
それでも、残業なんかでどんなに遅くなっても、俺はある『練習』と、佐緒里さんの見舞いは欠かさなかった。
彼女は絶対に目覚める――そう信じていたから。
今日は土曜日だったから、病院に頼み込んで、病室に泊まらせて貰った。
もし夜中に目が覚めても、明日の朝でも一番に彼女に逢えるように、一緒に居られるように、ずっと、彼女の傍に居られる様にした。
そして俺は、今まで以上に必死に祈った。
どうか、彼女が目覚めますように。
そしてその願いが通じたのか、朝日が昇る頃、一ヵ月程眠り続けていた彼女が目を覚ました。
「佐緒里さん!!」彼女の手をぎゅっと握り、彼女の『生』を確かめた。
「まこ・・・・と、クン?」
佐緒里さんはゆっくりと病室を見回した。「あは・・・・ヤダ。病院ってコトは、死に損なったんだ」そして、歪んだ微笑みを見せた。
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