ACT7. 婚約者の味は、禁断の果実

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 佐緒里さんの退院の日がやってきた。  俺はモチロン、毎日彼女の見舞いに行った。  最初は顔を見るなり「帰れ」と言われたけれど。  毎日通い続けるうちに、少しずつ彼女は俺と話をしてくれるようになった。  本当に少しずつだけど、彼女との距離は縮まったんじゃないかと思う。  とりあえずアニキと佐緒里さんが一緒に住む段取りだったから、彼女のマンションは引き払い期限が来てしまったので、帰る場所がない佐緒里さんを自宅に連れてきた。 「落ち着く先が見つかるまでは、遠慮なくここに居てくれていいから」 「でも・・・・」 「遠慮しなくていいって! 俺が、色々迷惑掛けちゃったし。それに、ちゃんと働いてるから、お金のことなら心配しなくてもいいから」  ちょっと強引だったかも知れないけど、佐緒里さんの部屋もちゃんと用意しておいたので、彼女を案内した。「ここ、使ってよ」 「有難う」  彼女は複雑な顔をしたまま、部屋に入った。  出来るだけ彼女のマンションにあったものは持ってきて、彼女の部屋として作った空き部屋に置いた。
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