ACT7. 婚約者の味は、禁断の果実

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  「でも私・・・・雅之さんを、裏切ったんだよ」 「裏切ったなんて・・・・全部俺のせいじゃん。佐緒里さんは悪くないよ。俺が、アニキに嫉妬して、貴女を無理矢理抱いてしまったから」 「無理矢理じゃ・・・・ないよ」 「えっ?」 「――雅之さんは、私を本当に優しく抱いてくれたわ。でも、貴方は違った」 「ゴメン、乱暴だったかな?」 「ううん、違うの。そうじゃなくて・・・・全然違う抱かれ方で、本当は雅之さんとは違うって解っていたけど。雅之さんにあんな風に抱かれたいって何時も思っていたその通りに、貴方が・・・・私を抱くからっ・・・・」  彼女の瞳から、涙が溢れた。 「私、雅之さんが好きなのに・・・・違う男の人に抱かれて、感じてしまうような女なんだよ。彼を、裏切ってしまったの。しかもその相手が・・・・彼の大事な弟だなんて・・・・そして、私はそれを解っていながら――貴方を拒めなかった」 「佐緒里さん! そんな風に自分を責めないで。悪いのは、俺なんだ。俺が無理矢理貴女を抱いてしまったんだ。だから俺を恨んで、嫌ってよ。アニキは貴女のコト、怒ってなんか無いよ。貴女はアニキを裏切ったりしてない。だから泣かないで、佐緒里さん」 「でもっ、裏切りだよ! それに、これ以上誠クンと居ると、どんどん貴方を好きになりそうで怖いの!」 「えっ・・・・?」  一瞬、彼女が何を言っているのか、解らなかった。  俺を、好きになる?  ――そんな、ウソだろ。  
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