第二章…昼の顔

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『お忙しい所申し訳ありません…あ、私クロフォードと言います。 この前の殺人事件について、聞き込みをしているのですが…』 やたら腰の低い刑事だった。 『いえ、警察に協力するのは…市民の努めですから…ご質問があればなんなりと…』 俺も丁寧に対応した。 『では…事件当夜…貴方はどちらで?』 『ここで調べ物をしてましたよ、もっとも私一人でですが…』 『なるほど…では、貴方の利き腕は?』 『右利きですが…それが何か?』 俺は実は両利きで…普段は右手だけを使っていた。 『いえ…参考までに聞いただけです…では、叫び声とかは…』 犯行現場は、ここから5分の距離だった。 『いや…残念ながら…』 『そうですか…』 クロフォードは軽くため息をついた。 聞けば、近くの屠殺工場の人間や…近所の誰もが…怪しい物音はしなかった、と証言していた。 物音や叫び声を聞いてないと言う証言は…俺で10人目だと言う… 彼がため息をつくのは、当たり前だった。 その後、彼は2~3質問したが… それは形式的なものだった。
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