281人が本棚に入れています
本棚に追加
この二つの事件以降、ホワイトチャペル界隈は…
夜になると人通りがなくなった。
ああ…誰も殺されたくないからな。
だが…日中は野次馬達がやってきて、まるで観光名所みたいな有様になっていた。
新聞は犯行をデカデカと一面で扱い…
スコットランドヤードも犯人探しに躍起になっていた。
そんな中、俺はいつもと変わらず診療を続けていた。
俺の所には警察の陰も形もなく…
容疑者リストから外れているのは、間違いなかった。
全てはあのエプロンのおかげって事だな!
警察…スコットランドヤードはかなり焦っていたようで…
疑わしげな人間達を、片っ端からしょっぴいていたようだ。
うちの診療所にも、警察から酷い目にあった人間達が、患者として来ていた。
……………………………
『なぁ…先生聞いてくれよ、ヤードの奴らひでぇんだぜ!
俺ぁ何もやっちゃいねぇってのに…』
容疑者にされた可哀相な男は、俺の治療を受けながら…忿懣やる方ない様子で話した。
『お気の毒に…かなり酷くやられましたね…
けど…骨には異常ないです』
俺は心底、気の毒そうな顔をして言った。
『とりあえず…痛み止めと貼り薬を出しておきますね。
いや…災難でしたね。』
男の身体には、あちこちにあざがあった。
かなり荒っぽい取り調べを受けたのは明白だった。
最初のコメントを投稿しよう!