第三章…第二の殺人と狂騒。

8/15
前へ
/99ページ
次へ
この二つの事件以降、ホワイトチャペル界隈は… 夜になると人通りがなくなった。 ああ…誰も殺されたくないからな。 だが…日中は野次馬達がやってきて、まるで観光名所みたいな有様になっていた。 新聞は犯行をデカデカと一面で扱い… スコットランドヤードも犯人探しに躍起になっていた。 そんな中、俺はいつもと変わらず診療を続けていた。 俺の所には警察の陰も形もなく… 容疑者リストから外れているのは、間違いなかった。 全てはあのエプロンのおかげって事だな! 警察…スコットランドヤードはかなり焦っていたようで… 疑わしげな人間達を、片っ端からしょっぴいていたようだ。 うちの診療所にも、警察から酷い目にあった人間達が、患者として来ていた。 …………………………… 『なぁ…先生聞いてくれよ、ヤードの奴らひでぇんだぜ! 俺ぁ何もやっちゃいねぇってのに…』 容疑者にされた可哀相な男は、俺の治療を受けながら…忿懣やる方ない様子で話した。 『お気の毒に…かなり酷くやられましたね… けど…骨には異常ないです』 俺は心底、気の毒そうな顔をして言った。 『とりあえず…痛み止めと貼り薬を出しておきますね。 いや…災難でしたね。』 男の身体には、あちこちにあざがあった。 かなり荒っぽい取り調べを受けたのは明白だった。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

281人が本棚に入れています
本棚に追加