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今日も、上がり際に買ったコーヒーをポケットに入れ、代り映えのしない帰路を寒空の下、歩き続けた。
昨日見かけた少女が気になり、ボクは今日も公園のベンチへ向かう。
いた……。
少女は鉛色の空を見上げて、ブランコを漕ぐ訳でもなく、物憂げにその視線を泳がせていた。
何故か安堵感に包まれたボクは、声をかけるでもなく缶コーヒーの蓋を開けると、人肌以下に冷めた苦い液体を胃の中に流し込んだ。
最後の数滴を、出来るだけ音をたてずに啜ったボクが、チープな満足感と共に視線を戻すと、そこには少女の視線が待っていた。
突然の事に狼狽したボクは、それでも精一杯の笑顔を作り少女に手を振ってみた。それはある意味賭に近かった。
不審がられたら、二度とこの公園には近づけない。帰り道も変えなければならない筈だ。
暫くして、どうやらボクは賭に勝ったらしく、少女は不思議そうな顔をした後、見た目の年齢から想像出来る相応の笑顔を見せてくれた。
しかし、突然近寄って話しかけてもいいものだろうか? ボクは無意味に周囲の遊具を見回し、出来るだけ平然を装う事に努めた。
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