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  ついに、と私は思った。ついに来てしまった、と。 私の行っていた仕事について、友人からは身を隠せと再三忠告を受けていたのだ。 それでも言われた通りにしなかったのは、ある種の意地と、仕えていた人間への忠誠心だ。 正しい事をしているのだという誇りが、私を支えていた。 刺客が差し向けられるという悪夢を見続けた時もあった。 毎朝部屋から出る時には、もう戻ってこないかもしれないという気持ちが心を掠めた。 仕事を続けることが出来たのは、社会を正しい方向へ導きたいという志があったからだ。 この借家の部屋の家主がいなくなった時、整理がつくようにと、常に必要最低限の家具と食材しか自宅においておかなかったのは正解かもしれない。 ああ、しかし私がこの場所で死ぬということは、この部屋が空き家になっても、まともに借り手が付かないだろう。 結局は骨折り損だったということか。 死神、という言葉が不意に頭をよぎる。 怖れていた死神が今、来たのだ。 しかし、私の心にあるのは絶望でも恐怖でも無かった。 これから間もなく死ぬのだという事だけが、ただ純然な事実として在るだけだ。 深々と降る雪が窓の外を白く染めている。 部屋の中が薄暗いせいで、外の方が明るく感じられた。
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