悪意

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『あいつはそんなことしないよ』 自分でも意外なくらい、はっきりと言い切るあたしに、依はなぜか不愉快そうに眉を上げた。 『ふーん。何回か会っただけにしては、よく知ってるみたいじゃん。案外おまえのほうが惚れちゃったんじゃないの?』 刺々しい言い方に、おどろいて依を見る。 妙な沈黙が流れる。 依は自分でもおどろいたようにまばたきをし、首をかしげた。 『……何怒っちゃってんの、俺?』 『さぁ…。こっちが聞きたいよ』 気まずい雰囲気のなか、依はしばらくあたしを見つめたあと、首をぽきっと鳴らして自分の部屋に入っていった。 .
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