288人が本棚に入れています
本棚に追加
夕方の駅のホーム。
急行列車が音をたてて近づいてくる。
見慣れた風景のはずなのに、なぜか目を離せなかった。
高速で近づいてくる列車が、不気味な怪物のように異様に感じたから。
もしかしたらあたしは、予感していたのかもしれない。
得体の知れない巨大な何かが、すごいスピードで近づいてきていることを。
問答無用であたしをひっさらい、二度と戻れないほど遠い場所に連れ去ってしまうことを。
もしその『何か』に名前をつけるとしたら、今ならきっと、こう呼ぶだろう。
―――『運命』
でもあたしがそれを知ることになるのは、もう少し先の話。
.
最初のコメントを投稿しよう!