1∥ りんごとトマト

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  「珍しい…。」 自然とそう呟きながらも、アルヴィスはふっと微笑む。 明日は雪が降るかもしれない。 「せんせいが笑ってる。」 「どうしたの?」 いつもと、どこか違う講師の様子。 それに気付いた生徒たちが、次々に疑問の言葉を投げかけた。 「いや…。」 指摘されて初めて笑っていたことに気付き、それを見られたことを僅かばかり恥ずかしく感じながらも、アルヴィスは口元をさっと手で覆う。 別に、知られて不味いことではないが、見つかったら後が面倒だ。 「…なんでもない。」 「うそだぁ。」 再度そう言われたが、面倒は御免(ごめん)の為、アルヴィスは口を閉ざす。 でも、コイツ等意外と目敏いんだよなぁ…。 ガキのくせに。 「はいはい、おしゃべりは終わりだ。  みんな集中して、この問題解けよ。」 「は~い。」 全くもって、やる気のない返事に溜め息を吐きたくなるが、いつものことだ。 アルヴィスは一度戻したチョークを手に取ると、再び黒板へと向き直った。 さ、授業再開するか。 「あ!  キレイな女の子がいる!!」 しかし、そんなアルヴィスの心を知ってか知らずか。 不意にそんな声が上がった。 そして、教室に音が溢れ返る。 「うそっ!? どこどこ?」 「ほんとだ!  窓の外だよ!!」 「誰あれ?」 「先生が笑ってたのあの人じゃない?」 様々な憶測が飛び交い、アルヴィスは苦笑いを浮かべた。 見つかっちまったか。 「先生、あれ誰?」 「窓開けていいですかぁ?」 アルヴィスが返事をする前に、ガタガタと複数のイスを引く音がして、最後にガラッと、教室と外界を隔てていた薄いガラスが取り払われた。  
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