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「珍しい…。」
自然とそう呟きながらも、アルヴィスはふっと微笑む。
明日は雪が降るかもしれない。
「せんせいが笑ってる。」
「どうしたの?」
いつもと、どこか違う講師の様子。
それに気付いた生徒たちが、次々に疑問の言葉を投げかけた。
「いや…。」
指摘されて初めて笑っていたことに気付き、それを見られたことを僅かばかり恥ずかしく感じながらも、アルヴィスは口元をさっと手で覆う。
別に、知られて不味いことではないが、見つかったら後が面倒だ。
「…なんでもない。」
「うそだぁ。」
再度そう言われたが、面倒は御免(ごめん)の為、アルヴィスは口を閉ざす。
でも、コイツ等意外と目敏いんだよなぁ…。
ガキのくせに。
「はいはい、おしゃべりは終わりだ。
みんな集中して、この問題解けよ。」
「は~い。」
全くもって、やる気のない返事に溜め息を吐きたくなるが、いつものことだ。
アルヴィスは一度戻したチョークを手に取ると、再び黒板へと向き直った。
さ、授業再開するか。
「あ!
キレイな女の子がいる!!」
しかし、そんなアルヴィスの心を知ってか知らずか。
不意にそんな声が上がった。
そして、教室に音が溢れ返る。
「うそっ!? どこどこ?」
「ほんとだ!
窓の外だよ!!」
「誰あれ?」
「先生が笑ってたのあの人じゃない?」
様々な憶測が飛び交い、アルヴィスは苦笑いを浮かべた。
見つかっちまったか。
「先生、あれ誰?」
「窓開けていいですかぁ?」
アルヴィスが返事をする前に、ガタガタと複数のイスを引く音がして、最後にガラッと、教室と外界を隔てていた薄いガラスが取り払われた。
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