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「はぁはぁ…。」
荒い息づかいが、反響しては繰り返され、静かに響いていた。
本能のままに、肺から二酸化炭素を吐き出し、胸を激しく上下させる。
脳が仕切りに酸素を求めていた。
撒(ま)いたか…?
振り返っては追っ手を探すが、それらしい影はない。
唯、どんよりとした闇が何処までも続いていた。
空を仰げば、人工的な灰色(グレー)の天井が顔を覗かせていて、自分が今現在、地下にいるのだということを再確認させられる。
今、どこら辺だろう?
そこは、同じような壁、同じような天井が続くばかりで、コンクリートで全てが覆い隠されていた。
こんな様子で、自分の現在地など判るわけがない。
「はぁ‥はぁ…。」
自分の現在地を認知することを諦め、額の汗を拭うと、一つ、大きく息を吸い込んでみる。
水音と共に漂くるのはお世辞にも良いとは言えない変な臭いで、それが鼻を掠(かす)めると同時に、徐々に体へと染み付いてくるのを頭の隅で感じた。
普段なら顔をしかめるところなのだが、よく考えると、それが『嫌な臭い』を掻き消してくれている。
そう考えると、今はその異臭が有り難かった。
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