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でもそれでもいい。
最後に誰かと楽しく過ごせた思い出が残る。
そう考えると胸はずっと軽くなる。
「これは不幸中の幸いってやつかな? ねぇ、お父さん」
「何独り言を言ってんだい。この疫病神」
この罵声にミヅキが振り返る。
そこには意地悪くミヅキを睨む小太りの中年の女性が立っていた。
「あ、お隣の」
ミヅキの表情が曇る。
女はミヅキの家のお隣さんだった。
女はずしずしと近付くと威圧するような態度でミヅキに言った。
「あんた、今までどこ行ってたんだい?」
女の問いにミヅキの表情がますます曇った。
「どこって、私は、その」
どこか歯切れの悪いミヅキに、女はさらに暴言のように吐き捨てる。
「おまけにどこの馬の骨かわからない奴まで連れ込んで。また、疫病神かい?」
きっとアルトのことだ。
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