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だが水道設備など完全に崩壊している撃墜の日以降の世界では、飲み水は愚か、洗濯に使う水ですら重宝される貴重品である。
それなのに、こんな寂れた小さな民家で、風呂に入れるだなんてかなり珍しいことである。
「うちには飲み水とは別に雨水を貯めるタンクがあるんで大丈夫なんですよ」
「へぇ、よくわかんないけど、とりあえずすごいな」
「フフ、そんな大それた物じゃないですよ。昔、お父さんがタンクを設置したのですから」
「ふーん。その父さんってのはどこに居るんだ?」
何気なく言ったアルトだったが、ミヅキの表情が少し暗くなったのに気づいた。
「昔、色々あって死んじゃいました」
「そうか」
深くは聞かなかった。
聞いたって何とかなるものでもないし、今の世の中、親を失った子どもが居るのは珍しいはない。
そんなのに一々同情していたのでは切りがない。
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