1693人が本棚に入れています
本棚に追加
学校からのいつもの帰り道。商店街を歩く足取りが重いのが、自分でもわかる。
はあぁぁぁぁぁ…。
もう溜め息しか出てこない。
売り言葉に買い言葉、短気は損気と言うけれど、さすがにあれは怒ってもいいでしょう。
いいんだろうけど…はあぁぁぁぁぁぁ…。
「…どうしよう…」
頭痛いよ。
「穂波(ほなみ)ちゃん、どうしたの? 落ち込んだ顔をして」
両手に買い物袋をぶら下げて、声をかけてくれたのは、小さい頃からのご近所さん。
「カレンさん」
赤毛の彼女は米国人。旦那さんも米国人だったが、随分前に交通事故で亡くなられ、今は小学生の双子の兄弟を女手一つで養育中。
「荷物重そうですね、一つ持ちますよ」
「あら、ありがとう」
そう言いながらも、一番軽そうな袋を渡すところが、彼女の性格を表しているよう。
「で、どうしたの? 恋の悩み?」
「そんなのだったら、悩みがいがあるんですけどね…」
親に相談する訳にもいかない話し。でも、誰かに聞いて欲しいから。
「あのですね…」
今日のお昼休みのことでした。
いつものように花絵(はなえ)と中庭でお弁当を広げていたところに、五人の乱入者達が現れまして。
「泥棒猫!」などと暴言を吐きました。
あまりのことにびっくりしていると、中央にいた子が花絵に近づき、彼女の長い髪を鷲掴みにして引っ張ります。
花絵は悲鳴を上げ、あたしは慌てて相手を引き離そうとしました。
「ちょっと、何するのよ!」
「人の男を取っておいて、澄ました顔するんじゃないわよ!」
「『人の男』って…何のこと…」
「とぼけないで!」
ようやく彼女は花絵の髪を離しました。
「高直(たかなお)を取ったでしょ!」
あたしと花絵は顔を見合わせて。
「…心当たり、ある?」
「ううん。だって、今、彼氏いない…あ」花絵が思い出したように「そう言えば、二、三日前に告られたっけ。でも、断ったよ?」
最初のコメントを投稿しよう!